Home 小説 - Stories ある会話(ところどころペンキ剥がれの青いベンチにて)

ある会話(ところどころペンキ剥がれの青いベンチにて)

by lisa shouda

そりゃな

知ってたさ

何もかも

じぶんが何者かも

ずっと
知ってたんだ

なのに

知らないふりをして
できないふりをして

やりすごしてきた

思い出しそうになったら
いろいろ忘れるために
手当たり次第飲んでさ
きったない煙も肺まで吸い込んで
愚痴ばっかりでさ
勝ちだの負けだの毎シーズン大騒ぎして
やたら金持ちを妬んでさ
あいつは政治家失格だとかおれのが上手くやれるとか言って
クソみたいな口の使い方したよ

スカッとするし
気分いいぜ
信じ込もうとしてたけど

わかるだろ

気分なんていいもんじゃないよ

悪いよ
ぐわっと もやもやする

けど
なんでも続けてりゃ
フツウになるもんでさ

最悪の気分ってやつを味わうまで
放っておいた

ほとほと嫌になってね
観念したよ

そういや観念って言葉
もともとの意味知ってるか
シッダールタの弟子たちが…

まあいい
話を戻そう


おれは観念した

で、認めた。





世界はおれが創ったんだってこと




なんでだってこんな話をきみにしているのかって?

…そうだな
こう伝えるためだろうな

「きみはおれみたく最悪の気分を味わう必要なんかない」

だいいち、

きみの世界に
おれを創って
ベンチを創り
腰掛けさせて
こんな話をさせたのは
きみだろ


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